日本の国土の約7割は森林で、中山間地域は8割を超えています。
しかしながら、これまで地域の大部分を占める森林活用の本格的な取り組みが展開されてきませんでした。
ここ最近になって、自伐林業が注目を集め始めています。
正しくは、自伐型林業。はたしてどのような林業なのでしょうか?
目次
自伐型林業とは?
自伐型林業とは、森林の経営や管理、施業を山林所有者や地域が自ら行う自立・自営型の林業だ。限られた森林を、そこから離れず永続管理し、毎年持続的に収入を得ていく。離れてしまった林業を地域に取り戻す手法である。
自伐型林業 – 2014年11月 日経エコロジー
簡単に言うと、自分たちが住む地域の森林の管理をその地域の人たちで行い、それを仕事にしていこうというものです。
自分たちの森林を自分たちで守る、なんだか当たり前のような気もするのですが、従来はどうだったのでしょうか。
地域から林業が消えた。
日本の林業政策は1964年の木材自由化以降、「強い林業」構築を目指して森林組合などの事業体に山も労働も集約化させ、生産性を重視した大規模林業へと向かい今日に至っている。使う機械も大規模となり、山林所有者や地域住民では対応が不可能になった。経営や施業が分離された委託型となり、地域から林業をどんどん遠ざけてしまった。その結果、林業従事者は昭和30年代の10分の1まで減少し、地域から林業が消えたのである。
自伐型林業 – 2014年11月 日経エコロジー
さらに、高価な機械を保有しないと林業ができないということも一般化され、新規参入が難しいものとして捉えられるようになってきたのです。
これにより、地域自治体は、地域住民には対応できないと決めつけ、補助金を与え、林業を森林組合に丸投げするようになったわけです。
その結果、林業が地域振興策にあがってくることもなくなりました。
新規参入が難しいは嘘。
自伐型林業とは、山主や地域住民らが自ら山林を手入れし、世代を超えて収入を得つづけらあれるような山作りを目指す林業だ。そのため、大規模皆伐(一定面積の山林をすべて伐採する)のような、大型機械を使用した環境負荷のかかる林業は基本的に行わない。伐木に使うチェーンソーと搬出用の林内作業車(新車200万円弱)、簡易軽架線(ワイヤー)など最低限の機材があればグループで作業できるため、参入のハードルが低く小規模経営から始められる。
「人と自然が共に生き続けるための自伐型林業」-2015 夏『SQUARE』
自分たちが住む地域の森林の管理をその地域の人たちで行い、それを仕事にしていく。
そのために必要な機材は最低限のもので大丈夫です。
一番気になるのは、やはりそれがきちんと「仕事」になるのかということですよね。
副業としての自伐型林業
3年目を迎えた彼らの昨年の山の収入はいくらか。A材(建築用材)販売と作業道などの補助金をあわせて約140万円(秋冬の3ヶ月)、さらに四万十川河口の温泉施設に薪の消費先(薪によるボイラーシステム)を自分たちで営業して作り、普段は山に捨てられる低質のC材が約12万円の収入につながった。月10万円の機械のリース代と燃料代を引いても、結果的には収入ゼロの秋冬シーズンに2人で毎月40万円ほどの収入を得られるようになった。
「人と自然が共に生き続けるための自伐型林業」-2015 夏『SQUARE』
高知県四万十市で、カヌーのインストラクターを行う秋山さんという方が、「人と自然が共に生き続けるための自伐型林業」で紹介されています。
前述の通り、本業はカヌーのインストラクターなのですが、秋冬の3ヶ月間は冷え込むためお客さんは来ず、収入はゼロです。そこで副業として林業を行っているわけです。
秋山さんは、本業の収入がゼロの時期に、林業で毎月40万円ほどの収入を得られるようになったそうです。
・補助金を取る。
・営業を行い薪の消費先を作る。
ことができれば、安定した収入を得ることもできそうですね。
材の販路をきちんと作ることができれば本業として収入を得続けていくこともできるかもしれません。
地域住民で地域の山林を守っていくには。
「地域住民や山林所有者に『意欲がない』と決めつけるのは間違い。住民が参入できる仕組みさえあれば林業者は何倍にも増える」
地域住民や山林所有者が、自伐林業に踏み出せないのは、仕組みがないから。
これまでやったことがないから何から手をつけていいかわからないのです。
また山林所有者の問題もあるらしく、先祖が持っていた山が相続されているけれど気づいていない人も多いそうです。
地域で林業を行える仕組みを作れれば、住民を巻きこんで山林を自分たちの力で守っていけるようになると思います。
自伐林業イベントに参加してきました。
裏山あそび冬~伐採から薪づくり編~
開催場所は東広島市の黒瀬町。初めての参加だったのですが、想像以上に人が多く、
自伐林業×お祭りのように盛り上がっていました。
まずは伐採。
まずは、プロの方にレクチャーをしていただきます。
1.木を倒す方向を決める。(道路に倒れないように、他の伐採しない木を折らないように、自分の方向に倒れてこないように。)
2.ロープで牽引。(伐採する樹木の重心と、倒したい方向が異なる時。)
3.受け口の下切り、受け口の斜め切り、追い口切り。(木を思い通りの方向に倒すために、手順を踏んで切っていきます。)
4.枝払い(薪にしていくのに必要のない枝を切っていきます。)
5.玉切り(一本の長い木を適当な長さに揃えて切っていきます。)
大きな木が倒れる瞬間を見るのは非日常で、歓声があがります。
木は思ったより重く、倒れてくるとかなり危険です。油断大敵。
竹食器を作ります。
竹を伐採し、みんなで竹食器を作りました。
コップとお皿を作って、食事に挑みます。
竹食器でカレーを食べる。
徹夜で作ったカレーを廿日市から持ってきてくださいました。
噂通り、いや噂以上の美味しさでおかわりしてしまいました。
作業の後で、大勢で食べるとやっぱり楽しいし、美味しいですね〜
猪のヨロイをいただく。
罠で取れた、猪のヨロイをいただきました。
特に体が大きいオスの個体には肩甲骨周りに皮下脂肪の中でも硬い部分があり、それをヨロイというそうです。
茹でた後にカットして、塩を振り、焼いたものをいただきました。
独特の臭みは感じるものの、めちゃくちゃ美味しかったです。「ビールのみて〜」と口を揃えていっていました笑
薪割り体験
腹ごしらえが終わったので薪割り体験です。
何度か薪割りをしたことがあったんですが、すぐに感覚を忘れるもので、取り戻すのに時間がかかりました。
時間を忘れて、薪を割り続けていたらあっという間にイベントが終わりました。
慣れてきたくらいが危ないみたいです。皆さん気をつけましょう。
自伐林業の可能性
今回イベントに参加したことで、自伐林業の魅力、そして可能性をひしひしと感じました。
材としても販売できる、体験としても売り出せる、観光と組み合わせることもできる。
何より、参加した人同士の団結力が強くなるので、地域の活性化などにも一役買いそうです。
自伐型林業の一冊
◆本書に登場する自伐型林業
■グループによる自伐型
・自伐林業研修修了生で自伐型林業チーム起業
・住職と門徒方で取り組む
■個人による自伐型
・Uターンで会社設立、地域の山を間伐
・養成塾でゼロから学び、10代でスタート
■個人による自伐+副業型
・自伐+副業で独立定着
・百業型林業―自伐と自家製材、林内栽培
■集落による自伐型
・津波後の森で集落営林組合設立
■自治体による自伐型林業支援
・自伐林家等支援事業-U・Iターン者定着
・間伐材買取費用補助-自伐集材を後押し
・薪ボイラー需要-自伐生産者を牽引
・自伐型林業支援-町に仕事創出
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